博士先生の研究日誌

博士号を取得した小学校教師の研究について

岸田首相の生成AIの国際的枠組みの設立表明を受けて−教育者としてできること−

広島AIプロセス・フレンズグループ

岸田首相は5月2日、訪問先のパリで生成AIに関するイベントに出席し、生成AIの安全な活用のためのルール形成について議論する国際的枠組み「広島AIプロセス・フレンズグループ」の設立を表明しました。

そのなかで岸田首相は「一方で、生成AIは光の側面だけではありません。我々は偽情報のリスクといった影の側面とも戦わなければなりません。」と述べています。

生成AIは利便性が高い反面、悪用などのリスクが考えられます。生成AIを使えば偽情報を容易に作り出すことができます。

AIリテラシーの必要性

国際的なルール形成が今後進められていくなか、私たち教育者はAIの使い手となる子どもたちに対して、AIとの付き合い方を教えていく必要があります。

保護者の同意があれば小学生でも生成AIを使用することは可能です。ChatGPTも保護者同意のもと13歳以上であれば使用することができます。

このため、AIの利便性やリスクについて小学校段階で教えていくことが求められます。

そして、AIと上手に付き合う方法(AIリテラシー)を身につけせることが必要です。

スマートフォンの普及を振り返る

私個人としてはスマートフォンの普及に対して対応しきれずに翻弄されている感じることがあります。

私の時代は携帯電話は高校生から持つ人が多かったように思います。

ひと昔前は「中学生になればスマホを買ってもらう」という声をよく聞いたものです。

現在はどうでしょうか?

NTTドコモモバイル社会研究所の調査によれば、小学6年生でスマートフォン使用率は5割を超えているそうです(※1)。

ひと昔前、スマートフォンのトラブルは中学生のことと思っていたのですが、瞬く間にスマートフォンの使用開始時期は低年齢化していきました。

このスピード感に驚かされます。

オンラインゲームやメッセージアプリにSNSとあらゆる場面でトラブルが起きます。

発達段階に応じていない情報を収集することもでき、対応の難しさを感じています。

生成AIは高校生や大学生の問題か?

前述したスマートフォンの例を考えると、答えはNOだと思います。いずれ生成AIの使用は小学生まで降りてくると私は考えています。

生成AIは小学校では関係ないと思っている方も少なくないでしょう。

私もスマートフォンの普及のときは同じでした。

スマートフォンのトラブルは小学校ではあまり関係ないと。

同じようなスピードで、もしくはより急速的に生成AIは普及していくかもしれません。

教師がAIリテラシーを身につける

子どものAIリテラシーを育むためには、教師がAIリテラシーを身につける必要があります。

そのために一度、ChatGPTなどの生成AIを使ってみることをおすすめします。

ChatGPTと他愛のない会話をすることから始めてみるのもいいでしょう。

生成AIを使いながらメリットとデメリットを理解していきましょう。

※1 https://www.moba-ken.jp/project/children/kodomo20230216.html (2024年5月2日閲覧)

先日発売した著書『これで安心 学校での対話型AI活用Q&A』はリスクを踏まえた上での活用について取り扱っています。ぜひこの機会にご一読ください。

 

https://www.amazon.co.jp/これで安心-学校での対話型AI活用Q&A-筆野-元/dp/418241523X

 

ChatGPTで読書感想文を書くのはいけないことか?

教育として意義のある活用を

今日はChatGPTで読書感想文を書くことについて考えたいと思います。

 

結論から言うと、限定的な利用ならば意味のある活用だと考えます。

 

禁止すべきは完全にChatGPTに作成させることです。

また懸念すべき点はもちろんあります。

前提として、ChatGPTを使ったものを自分の作品として偽ることは不正行為になることを理解しておきましょう。

 

ChatGPTが作成した読書感想文

桃太郎を題材に読書感想文を作るように指示をしました。
すると、ChatGPTは以下のように感想文を作成しました。

先日、「桃太郎」という昔話を読みました。この話は、昔から伝わる日本の有名なお話で、正義と勇気、そして友情について教えてくれます。

物語は、おばあさんが川で洗濯をしていると、大きな桃が流れてくるところから始まります。おばあさんとおじいさんがその桃を開けると、中から元気な男の子が生まれます。彼らはその子を「桃太郎」と名付け、愛情を持って育てました。

桃太郎が大きくなると、近くの村を襲っている鬼を退治するために、家族からもらったきびだんごを持って旅に出ます。道中で犬、猿、キジと出会い、きびだんごを分け与えることで友達となり、共に鬼退治の旅を続けます。

この物語の中で、桃太郎は勇敢で思いやりがあり、困っている人を助けようとする心を持っています。また、犬、猿、キジもそれぞれの能力を生かして協力することの大切さを教えてくれます。彼らは協力して困難を乗り越え、最後には鬼を退治して平和を取り戻します。

この話を読んで、私は困難に直面したときには一人で解決しようとせず、周りの人たちと協力して問題に取り組むことの重要性を改めて感じました。また、どんなに小さな力でも、それが集まれば大きな力になることがわかりました。

「桃太郎」は、ただの冒険物語ではなく、友情や協力の大切さを伝える物語であり、今の私たちにも大切なメッセージを教えてくれます。

このようにまとまった文章を一瞬で作成します。

これで課題を終わらせてしまえば、何の力も身につきません。

 

読書感想文を書くためのプロセスを聞いてみる

それでは、どのような活用なら意味があるのでしょうか。

まず1つは、読書感想文の書くためのプロセスをChatGPTに質問することです。

読書感想文を書くためのプロセスは、計画的に進めるとスムーズに書くことができます。ここでは、中学生にも実践しやすいステップを紹介します。

ステップ 1: 本を選ぶと読む

  • 興味がある本を選び、じっくりと読みます。この時、物語の流れや重要なイベント、登場人物の特徴をメモしておくと後で役立ちます。

ステップ 2: 本の要約と感想をメモする

  • 読み終えた後、物語の要約を簡単に書き出します。さらに、読んでいて感じたことや考えさせられたポイントをメモしておきましょう。

ステップ 3: テーマや視点を決める

  • 感想文のテーマを決めます。例えば、「勇気の重要性」や「家族の絆」など、自分が最も影響を受けた部分に焦点を当てると良いでしょう。

ステップ 4: 構成を考える

  • 感想文の大まかな構成を考えます。通常は以下のようになります。
    1. 序論:本の簡単な紹介や、選んだテーマについて触れる。
    2. 本論:具体的な感想や考察を展開。引用を用いて感想を支えることも有効です。
    3. 結論:感想文を締めくくる部分で、読んだことの個人的な影響や学びを述べます。

ステップ 5: 下書きを作成

  • 考えた構成に基づいて、実際に文章を書いてみます。この段階で言いたいことを自由に書き出し、文章の流れを作ることが目的です。

ステップ 6: レビューと修正

  • 下書きが完成したら、内容を見直し、誤字脱字の修正や表現のブラッシュアップを行います。可能であれば、誰かに読んでもらいフィードバックを得るとさらに良いです。

ステップ 7: 清書

  • 最終的な修正を経て、きれいに清書をします。ここで、文字が読みやすいように注意しましょう。

これらのステップを踏むことで、自分の感じたことをしっかりと伝える読書感想文が書けるはずです。各ステップを丁寧に進め、自分の思いをしっかりと形にしてくださいね。

私は昔、読書感想文の課題が出されたときに書き方を教わっておらず、苦しんだ思い出があります(もしくは、話を聞いていなかったのかもしれません)。

 

ChatGPTに質問すると、どのような流れで読書感想文を書けばいいか明確になります。

各ステップをより具体的に知りたい場合は、「ステップ○について詳しく教えてください」と追加質問をすれば、詳細な説明が回答されます。

 

このプロセスに基づいて自ら書くことは意味のある活用と言えるでしょう。

対話により考えを深める

自分の考えを深めたいときはChatGPTと対話するのも1つの手です。

桃太郎をテーマにChatGPTと対話をしてみました。

私:私は中学生です。私のレベルに合わせて対話をしてください。

 

ChatGPT:了解しました!何か質問があれば、いつでも気軽に聞いてくださいね。何について話したいですか?

 

私:桃太郎について考えています。鬼退治という目標を達成するために、自分1人では倒すことができないと犬たちに協力を仰ぎます。彼は客観的に物事を捉えられ、かつ戦略的な人物だと私は感じました。

 

ChatGPT:その見方はとても興味深いですね!桃太郎が犬やキジ、猿といった仲間たちに協力を仰ぐことで、彼の戦略的な思考やリーダーシップが表れています。彼はただ強いだけでなく、チームワークの大切さも理解しているんですね。この話から、あなたはどのような教訓を得ましたか?それとも他に何か気になる点がありますか?

「中学生」と伝えて難易度を設定し、「対話」という目的をあらかじめ指示しています。

自分の意見を伝えたり、ChatGPTからの質問に答えたりすることで考えが整理されていきます。

 

他の題材で例文を作成させる

読書感想文の辛い点として、完成した状態がイメージできないということが挙げられます。

このような場合、例文をChatGPTに作成させることができます。

 

例えば、私が桃太郎の読書感想文を作成させたように、他の題材で例文を作成して完成イメージを掴むことができます。

例文をお手本とすることで自分の読書感想文を書く手助けになります。

 

学校の先生に事前相談してみる/コンクールには出せない

使いたい場合は事前に学校の先生に相談してみてはどうでしょうか。

そして、どのように生成AIを使いたいかを伝えて、課題を出す場合にも実際に使用した方法を記載します。

 

もちろん、コンクール作品扱いはできません

自力でやった子と提出点は同じ扱いにはできないだろうなど、懸念点はあります。

 

ただし、取り組み方のわからない課題をただこなす/課題ができずに頓挫するよりは、よっぽど意義のある取り組みになると考えます。

 

『これで安心 学校での対話型AI活用Q&A』 発売!

みなさん、ChatGPTなどの生成AIを使ったことはありますか?

ChatGPTは非常に高い利便性から、「使わない手はない」と私は感じています。

「けれども、危険性もあるのでは?」

そう心配する方にうってつけの本を出版しました!

 

村上仁志先生との共著『これで安心 学校での対話型AI活用Q&A』です!

 

本書はChatGPTをはじめとする、対話型生成AIを活用するためのガイドです。

 

倫理面やリスクについて踏まえた上での活用方法を紹介しています。

「安全に生成AIを活用する」をテーマにしています。

 

「今までChatGPTを使ったことのない人」 「これまで何気なく使っていた人」

そのような方にぜひ、読んでいただきたい内容になります。

 

Q&A形式になっており、教員が生成AIを具体的に活用する場面を意識して書いています。

本書を片手にChatGPTなどの生成AIを使ってみてください。

 

倫理面やリスクに関しては、海外や日本の動向を調べてまとめています。

活用方法は文部科学省ガイドラインに則ったものであり、今すぐ活用可能な方法ばかりです。

 

以下のリンクから購入可能です!

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生成AIに役割を与える:新たな視点を開く鍵

生成AIに役割を与えることで、その回答内容を変化させることが可能です。そして、私たちは新たな視点を得ることができます。私はChatGPTに対して「あなたをスティーブ・ジョブズとします。掃除の大切さを子どもたちに説明してください。」と伝えました。すると、次のような回答がChatGPTより返ってきました。

わかりました。スティーブ・ジョブズのように話すことにします。では、子どもたちに掃除の重要性について説明しますね。

こんにちは、子どもたち。今日は、掃除がなぜ大切なのかについて話そう。私はスティーブ・ジョブズです。アップルを創業した人だよ。アップルでは、私たちは常に清潔さと秩序を重視してきました。なぜかって?それは、清潔な環境が創造性と効率性を高めるからだよ。

まず、掃除をすることで、あなたの周りの環境が整理されます。物がきちんと片付いていれば、必要なものをすぐに見つけられるし、作業に集中できるんだ。宿題や絵を描く時、机の上がきれいだと、もっと集中して取り組むことができるでしょ?

次に、掃除は自己規律を育てる良い方法だよ。毎日少しずつ掃除をする習慣をつけることで、責任感や継続力が身につくんだ。これは、学校の勉強や将来の仕事にも役立つスキルなんだよ。

最後に、掃除は心の健康にもいいんだ。きれいな部屋は気持ちを落ち着かせ、ストレスを減らす効果があるんだ。だから、掃除をすることで、心もすっきりするんだよ。

だからね、掃除はただの家事じゃないんだ。自分の環境を整え、心を健やかに保ち、大切なスキルを育てる方法なんだ。だから、今日から掃除を楽しもう。あなたの周りの世界を美しくすることができるんだから。ありがとう、子どもたち。

回答の内容を見ると、「創造性と効率性を高める」「学校の勉強や将来の仕事にも役立つスキル」というように、掃除をすることでの自分自身が成長することが強調されている点は特徴的です。私自身、子どもたちに話をするときに、どのように伝えればいいか悩むことがあります。そのような場合、生成AIに役割を与えることで新たな視点から回答を得ることができます。この回答を参考にして子どもたちへの伝え方を検討することできます。

ChatGPTのColoring Book Heroは便利だが、著作権を考えると・・

ChatGPTにはいくつかのアプリがあります。その中で「Coloring Book Hero」という塗り絵を作成するアプリがあります。幼稚園や保育園、小学校の低学年などでは塗り絵をさせることがあります。その塗り絵を簡単に生成できるのです。

私はこのアプリは家で使う分にはいいアプリだと思います。塗り絵本を買う必要がなくなります。何より、子どものリクエスト通り(既存のキャラクターなどは生成できません)の塗り絵を生成することができます。

しかし、教育現場で使用するとなると著作権の問題が発生する恐れがあります。基本的に教育現場では著作権の例外が適用されます。ただし、それは授業内の使用かつ必要と認められる限度の利用の場合です。例えば、ニュースで問題になっていた学校が発行した通信に使用したイラストの著作権ですが、授業外の利用なので著作権の例外は適用されません。よって、著作権侵害にあたるのです。

では「Coloring Book Hero」の場合を考えてみましょう。

「Coloring Book Hero」で生成された絵は一般的な内容に思えます。しかし、そのイラストが他のどの作品に似ている(類似している)、基づいている(依拠している)かは判断がつきません。そのため、現段階では著作権のあるイラストかもしれないと思い、使用するべきでしょう。

次に使用方法についてです。まずは、授業内の使用に留めるべきです。休み時間は授業外ではないので、避けるべきでしょう。そして、最終的に配布した塗り絵を回収することが無難です。外に出してしまった後にどのように扱われるかまでは管理ができません。その塗り絵をSNSにアップロードする恐れもあります。

持ち帰らせることで著作権侵害の恐れがあるため、私は教育現場において「Coloring Book Hero」は現時点では使用しにくいと考えています。画像生成AIは話題になっているため、今後はAIに対する法律も整備されていくと思います。今後、また展開があればこのブログで紹介したいと思います。

2024年4月『メリット・デメリットを正しく知ろう 先生のための対話型AI活用Q&A』出版予定(共著)

OpenAI社のChatGPTなどに代表される対話型生成AIの教育利用について、メリットとデメリットを踏まえた上で安全に活用するための書籍を共著にて出版予定(明治図書出版)です。

私は「生成AIを使わない手はない」と考えています。

それほど生成AIは利便性が高く、教育界においてその可能性が広がりつつあります。しかし、危険性もあるため、安全に活用するためには取扱説明書たるものが必要だと感じていました。

そこで、今回の書籍を出版する運びとなりました。教育に携わる方(教員・保護者)に是非読んでいただきたいと思います。また、今後も当ブログにて詳細情報を発信していきます。よろしくお願いします。

生成AIで子どもの新年の目標をレベルアップ!

新年を迎えて、今年の目標や抱負を考えると思います。学校現場でもこのような取組が行われていますが、実際の行動まで落とし込むことができてないという課題があります。そこで、生成AIを活用しましょう。

まず、子どもに目標を考えさせます。目標は「学習・運動・健康・その他」などのカテゴリーの中から、この1年で取り組みたいものを考えさせます。例えば、子どもが「算数の成績を上げる」という目標を設定したとします。次に、生成AIに算数の成績の上げ方を質問します。すると、次のような回答が返ってきました。

 基礎の確認と復習

  • 算数の基本概念(足し算、引き算、掛け算、割り算)をしっかり理解しているか確認しましょう。

    

 日常生活での数学の活用

  • 買い物時のおつりの計算や料理中の計量など、日常生活の中で算数を使う機会を作りましょう。

  • 実用的な場面で数学を使うことで、子どもの興味を引き、理解を深めることができます。

 問題解決能力の向上

  • 様々なタイプの問題にチャレンジし、問題解決能力を養います。

  • 問題を解く際には、解答過程もしっかりと書かせることで、思考の流れを理解させます。

 図や表を使う練習

  • 図や表を使って情報を整理し、視覚的に理解を深める練習をします。

  • グラフの読み取りや作成なども積極的に行いましょう。

 タイムマネジメントの練習

  • 宿題や勉強の時間を決めて、効率的な学習習慣を身につけさせます。

  • 短時間で集中して学習することが、効果的な学習につながります。

 ゲームやアプリを利用

  • 数学を題材にした教育ゲームやアプリを利用して、学習を楽しみながら進めます。

  • 子どもが興味を持ちやすい形式で学習することが重要です。

 親の関与

  • 学習に対する関心を示し、定期的に進捗をチェックしましょう。

  • 子どもが困っている場合は、一緒に問題を解決することで、理解を深める手助けをします。

 追加学習素材の活用

  • 学校の教科書以外にも、別の算数の問題集や教材を利用して、さらに学習の幅を広げます。

 定期的なテストや自己評価

  • 習った内容について定期的に小テストを行い、理解度を確認します。

  • 間違えた問題は復習し、理解が不十分な部分を明確にします。

上記のように、具体的な行動が示されています。より詳細を求める場合は追加質問をしていくといいでしょう。回答内容が適切か大人が吟味した上で、子どもに取り組むことができることを選択させます。選択した項目は子どもが目にする所に書かせましょう。

生成AIを使うことで新年の抱負や目標が実用的な目標設定に様変わりします。子どもだけでなく、我々大人の目標設定についても活用することができます。時間のある冬休み中に、ぜひ取り組んでみてください。