体育・保健体育の指導と評価の改善・充実について
久しぶりの更新です。今回紹介するのは、令和8年4月24日に示された「体育・保健体育、健康、安全WG(第9回)」の関係資料です。
これらは、次期学習指導要領を見据えた体育・保健体育の指導と評価の改善について整理した資料です。資料を読むと、体育・保健体育が、単に「運動技能を高める教科」や「健康に関する知識を覚える教科」ではなく、子どもたちが自分の心身、生活、社会との関わりを考え、よりよく生きる力を育てる教科として改めて整理されていることがわかります。

1. 重要なキーワードは「高次の資質・能力」
今回の資料で特に強調されていたキーワードは「高次の資質・能力」です。
資料では、個別の知識や技能を別々に身に付けるのではなく、それらを結び付けて理解し、実際の運動場面や日常生活の中で活用できる力だとされています。
例えば、単に「パスができる」「走ることができる」「泳ぐことができる」だけではなく、運動の特性を理解し、自分や仲間が楽しさや喜びを味わうために、動き方、関わり方、安全への配慮、ルールや作戦を工夫できることが重視されています。
保健でいえば、単に「睡眠は大切」「食事は大切」と理解するだけではなく、その知識を自分の生活と結び付け、よりよい行動を選択できることが重視されています。
つまり、これからの体育・保健体育では「知っている」「できる」だけでなく、「日常生活で行う・生かす」ことが重視されます。
2. 深い学びのための「余白」
資料では、「余白を創出する」という考え方も示されています。
この「余白」は、教師と子どもが、学びの目的を見失わずに考えたり、試行錯誤したり、工夫したりするための時間をつくることを意味しています。
昔ながらの体育は「この単元ではこの種目をやる」「この技能を全員に身に付けさせる」という授業が主流だと思います。しかし、資料では運動やスポーツは特定の種目の競技力を育てることが目的ではなく、子どもたちが動作や運動の行い方、運動との関わり方を学び、楽しさや喜びを味わうことが大切だとされています。
たとえば、バレーボールの単元であれば、アンダーハンドパスやラリーの技能の習得ばかりに重点を置くのではなく、余白の時間を活用して「どうすれば全員がゲームに参加しやすくなるか」「どうすれば仲間と協力して攻防を楽しめるか」「安全に活動するには何が必要か」といった学びを含めて授業を計画することが求められます。そのためには、柔らかいボールを使う、ネットの高さを調整する、ルールを簡易化する、チームで作戦を考える時間を設けるなど、教師側の工夫も重要になります。
私は、運動習慣は人生において欠かせないものだと考えています。資料を読んでいて体育・運動嫌いを作らないように、余白の時間を活用して、充実した体育の授業を作り上げることは子どもたちの将来にも関わる大事な教育の1つだと改めて感じました。
3. ICTは「学びを可視化するツール」
資料では、体育・保健体育におけるICT活用についても具体的に示されています。
例えば体育では、動画で自分の動きを確認する、仲間の動きを見て助言する、チームのゲームの様子を撮影して作戦を考える、ラップタイムなどのデータを記録して目標設定に生かす、といった活用が挙げられています。保健では、子どもたちが自分の生活と学習内容を結び付けた考えを端末に入力し、学級全体で共有したり、地域の事故が多い場所をクラウド上で整理して安全対策を考えたりする活用が示されています。
ただし、資料はICT活用について、いくつかの留意点も示しています。
・機器操作そのものが目的化しないこと。
・児童生徒の身体活動時間を確保すること。
・児童生徒が使いやすいように配慮すること。
・個人情報を適切に扱うこと。
これは非常に大切です。ICTは学びを深めるための手段です。動画を撮るなら、何を見るのか。共有するなら、何を考え合うのか。データを取るなら、次の行動にどう生かすのか。目的を明確にして使うことが必要です。
4. 保健は「知識構築型の授業」から「生活に結びつける授業」へ
資料では、保健に関する課題として子どもを取り巻く現代的な健康課題が多様化・複雑化していることが示されています。性、薬物、食、生活習慣、心の健康、感染症、安全、SNS、自然災害など、子どもたちを取り巻く健康・安全の課題は大きく変化しています。
また、資料では健康に関する原則や概念と、具体的な生活行動とを結び付ける力に課題があることも示されています。
これは、私自身が保健授業の実践をしていて痛感していることと共通しています。
子どもたちは、「朝食を食べた方がよい」「睡眠は大切」「運動は健康によい」という知識は当然知っています。しかし、自分の生活に生かすことができていないケースが多いです。例えば、「健康な生活」の学習では、自分の一日の生活を振り返り、睡眠、食事、運動、休養のバランスを考える。「心の健康」の学習であれば、不安や悩みに対して自分に合った対処方法を考える。つまり保健では、正しい知識を伝えるだけでなく、子どもが自分の生活を見つめ、よりよい行動を選ぶ力を育てることが必要です。子どもたちにとって、いかに自分ごとにすることができるかが鍵となるでしょう。
5. 考察:授業をどう変えていくか
今回の資料を生かすために、まず意識したいのは授業づくりの出発点です。「この単元で何をやるか」から始めるのではなく、「この単元の終わりに、子どもたちが何を理解し、何を考え、どのように生活や運動に生かせるようになっていてほしいか」から逆算することが改めて重要だと感じました。
体育であれば、種目の技能だけでなく、運動の楽しさ、仲間との関わり方、安全への意識、自分に合った運動との付き合い方を含めて考えることが大切です。
保健であれば、知識を覚えさせるだけでなく、健康課題を自分の生活と結び付け、よりよい行動を選択できるようにすることが大切です。
これらを達成できるように授業を考えていくのです。
ICTについては、高度な実践をする必要はありません。まずは、動画で自分の動きを見る。チームの作戦を画面上で整理する。保健の授業で必要に応じてクラウドで考えを共有する。このような小さな活用から始めることが現実的です。ただし、ICTを使うことで活動時間が減ることや、操作が目的になることには注意しないといけません。
自分の体育・保健体育の授業は、「種目をこなすこと」や「知識を覚えること」が目的化していないか。運動が苦手な子も、授業の中で楽しさや達成感を味わえているか。子どもたちは自分の生活と保健の学習内容を結び付けて考えているか。ICTは、体育や保健の学びを深めるために使われているか。
特に「生活で生かす」という点は非常に難しく(そうは簡単に人の行動や習慣は変わらない)、現実的には行動理論の考え方なども踏まえて授業をつくる必要があると私は考えます。この部分は私も今後、研究として取り組んでいきたいと資料を読み、強く思いました。
今回の記事が皆様の今後の体育の学習に役立つものとなれば幸いです。
【参考・引用文献】
・文部科学省:体育・保健体育の指導と評価の改善・充実について.2026.Available at: https://www.mext.go.jp/content/20260423-mxt_kyoiku02-000049408_00101.pdf (Accessed May 9, 2026)
・文部科学省:体育・保健体育、健康、安全 ワーキンググループにおける検討事項等 (参考資料).2026.Available at: https://www.mext.go.jp/content/20260423-mxt_kyoiku02-000049408_00301.pdf (Accessed May 9, 2026)







