博士先生の研究日誌

博士号を取得した小学校教師の研究について

AI時代に必要とされるスキルとは? 教育で伸ばすべきスキルと課題を考察

AI技術の進歩

AI(人工知能)の急速な進歩は、データ分析や言語処理など、私たちの生活や仕事におけるさまざまな領域で大きな変革をもたらしつつあります。一方で、仕事を失うことや人間にしかできないスキルの重要性といった課題も浮き彫りになっています。

本記事では、関連文献をもとに、AI時代にこそ求められるスキルそしてそれを育むための教育について考察しました。

 

(image FX)

AI時代に必要なスキルとは?

AIは、大量のデータを高速で分析し、予測や意思決定を支援する強力なツールです。しかしその一方で、「人間が持つ強み」をどのように活かし、AIと協働していくかが、これからの働き方や教育における大きなポイントです。参考文献では以下の点が強調されています。

 

タスクやプロセスの効率化はAIが得意だが、それを活かすためには人間が適切に指示・管理・連携しなければならない。 

創造性、批判的思考、コミュニケーション、協働などの能力が、人間とAIの相乗効果を生む。 

教育機関は、これらAIと相性の良いスキルを伸ばすためのカリキュラム設計や教授法の変革が必要とされる。

 

AI時代に注目されるスキルセット

また、AIによって強化される可能性が高い場では、以下のスキルが重要とされています。

  1. 創造性:新しいアイデアや斬新な解決策を生み出す力。
  2. 批判的思考:情報を分析・評価し、的確な判断を下す力。
  3. コミュニケーション:人間同士だけでなく、AIとも対話する力。
  4. コラボレーション:人間とAIが協力しあい、共通の目標に向かう力。

AIによって何を作り出すかは使用者である人の創造性によります。

また、私たちはAIの出力に対して批判的思考を働かせて意思決定する必要があります。

高いコミュニケーション力によりAIから精度の高い回答を引き出せます。

どのタイミング、どの部分でAIと協働するかなど、コラボレーションスキルは効果的なAI活用には不可欠です。

 

AIの使用を前提にこうした非認知能力を高めていく必要があるのです。

しかし一方で、多くの教育システムがAI特有のスキル育成に対応しきれていないという現状があるとされています。

 

AI時代のスキル育成を阻む4つの課題

 (1) 概念上の課題

AI時代に求められるスキルの定義や測定方法は研究が進められている段階です。また、人が主導すべき業務と、AIに任せられる業務の境目も曖昧だとされています。

 

 (2) 方法論上の課題

従来型の教育に、AIツールを効果的に取り込む方法については検討されている段階です。 

単にAIの仕組みを「座学」で学ぶだけではなく、実際に人とAIが協働する経験を積める授業が求められると述べられています。

児童生徒の資質能力の育成の阻害をしないような活用方法が必要となりますね。

 

(3) 運用上の課題

地域や経済状況が異なる学校で、AI教育を広く普及させるには、十分なリソースと教師に対する継続的な研修が必要だとされています。もちろん、教員のAIリテラシーを高めることは不可欠となります。  

インフラの整備や機器導入・維持も必要であると述べられています。

 

 (4) 倫理上の課題

教育現場で使用されるAIは公平性、透明性、データプライバシー保護が求められると述べられています。おそらく将来は学校現場に教育に特化したAIが導入されるはずです。  

また、学習者のデータがAIアルゴリズムのバイアスを助長しないようにするなど、児童生徒がAIを活用するための適切なガイドラインの必要性についても言及されています。

文部科学省ガイドラインをベースとして今後は各自治体の方針が決められていくのではないかと考えます。

 

テクノロジーが進むからこそ人は学ぶ必要がある

AIが単純作業を代替したとしても、「結果をどう活用するか」「複雑な状況でどのように判断するか」は人の役割と考えられています。

AIを何に使い、どのように使うかは人間次第です。このため、基本的な認知能力は必要不可欠と考えます。

当然ですがAIを扱う技術的な能力、デジタルリテラシーも必要です。

 

AIに任せればいいから人は学習しなくていい訳ありません。

むしろ、AIを効果的に使うために人はより学習する必要があるのです。

AIは進化し続けます。つまり、人は新しいスキルや学びを柔軟に取り入れる姿勢を保ち続けなければなりません。

 

今後の教育について

授業の中で生成AI等を活用し、児童生徒が批判的思考・問題解決を学ぶ機会をつくることは重要です。

 

また、AIを活用しながら課題解決する活動を実施することで、創造性やAIリテラシーを同時に育むことが可能です。

そのために、教師はAIに関する知識や最新ツールについて継続的に学び、教育現場で活かせるようにすることが必要でしょう。

 

おわりに

創造性・批判的思考・コミュニケーション・協働などの“非認知能力”は、AIの進歩によってむしろ需要が高まっているように思います。

また、これらを活かすために基本的な認知能力、技術的な能力やデジタルリテラシーも欠かせません。

 

そして、何より大切なのはAIを使って“何がしたいか”です。

 

子どもたちがそのような目標や目的意識を持てるように日々の教育活動に努めていきたいと思います。

 

変化の激しい時代に教育に携われていることを幸運に思いながら、私たち教師がAI時代の教育の在り方をアップデートし続けることで、子どもたちの新たな可能性を切り拓いていけると信じています。

 

参考文献

Brynjolfsson, E., & McAfee, A. (2014). The Second Machine Age. W.W. Norton & Company.

Frey, C.B., & Osborne, M.A. (2013). The Future of Employment: How Susceptible Are Jobs to Computerisation? Oxford Martin School.

O’Boyle, E., Humphrey, R., Pollack, J., Hawver, T., & Story, P. (2011). “The relation between emotional intelligence and job performance: A meta-analysis.” Journal of Organizational Behavior, 32(5).

OECD (2019). OECD Skills Outlook 2019: Thriving in a Digital World. OECD Publishing.

Senge, P. M. (1990). The Fifth Discipline: The Art & Practice of the Learning Organization. Doubleday.

Van Laar, E., van Deursen, A. J., van Dijk, J. A., & de Haan, J. (2017). “The relation between 21st-century skills and digital skills: A systematic literature review.” Computers in Human Behavior, 72.

World Economic Forum (2020, 2025). The Future of Jobs Report. World Economic Forum.

Satish Kumar. (2023) “Developing Human Skills in the Era of Artificial Intelligence: Challenges and Opportunities for Education and Training” Scholedge International Journal of Multidisciplinary & Allied Studies 10 (2)